INTERVIEW
Q-pot.デザイナー・ワカマツ タダアキ ロングインタビュー
新作メルティースライスチーズ Q-pot. ONLINE SHOPにて先行発売中!
2017.06.13
奥深いストーリーとユニークでひねりのあるポップアートのような多彩なデザインで
みんなを笑顔にするポジティブアクセサリーライン<Q-pot. PRODUCTS>。
<Q-pot. PRODUCTS>を代表する
新作「メルティースライスチーズ」がデビュー。
そこで、Q-pot.デザイナー・ワカマツ タダアキにロングインタビュー!
「チーズ」「バーガー」「フレンチフライポテト」といった
遊び心溢れる作品の誕生秘話やこだわりについてワカマツ氏本人に直撃しました。
Q まずは「チーズ」についてお聞かせください。
アイデアが生まれたのはどのようなきっかけだったのですか?
シルバー素材の経年変化で硫化すると黒くなっていくという性質を用いて、
何かデザインができないかなと考えていました。
自分の好きな食べ物とか、世の中になかったモチーフを素直に表現してみたいなと思っていたので
自分の好きなものって何だろうと考えた時に「チーズが好きだな」って。
実はチーズが誕生したのはブランド立ち上げ前で、まだ<Q-pot.>というブランド名すらなかったような時期でした。
当時は<Q-pot.>を立ち上げる前で、とにかく時間がありました。
というよりは時間しかなかったので、研究に研究を重ねて今のチーズが完成しました。
チーズは2年間くらい温めていた作品で、チーズのように熟成させていました。(笑)
Q-pot.作品のなかでは本当に最初にデザインをしたのがチーズだったので、僕自身「チーズ」は一番思い入れがあります。
Q 「チーズ」のこだわりのポイントをお聞かせください。
最初は穴が貫通した状態のチーズを作ってみたのですが、なんだかジグゾーパズルのようになってしまって、、、。
思っていたよりもチープな印象になったので、どうすればチーズ本来の温もり感を出せるかなと
長い時間をかけて試行錯誤していました。
研究の末にたどり着いたのは、穴を貫通させるのではなく、くぼみを残すというデザインでした。
穴を貫通させずに途中で止めてあえて残すことで、エメンタールチーズに生まれる気泡のように
よりチーズっぽくリアルな表情になりました。また自然にできる気泡を再現するために、
くぼみの部分を重ねてみたりこだわりました。
経年変化を活かし、チーズが熟成していく様を表現することもできました。
チーズリング(S)¥12.000・¥14,000 / (L) ¥23,000・¥28,000
Q 初期の頃に誕生した「チーズ」シリーズですが、
新作の「メルティースライスチーズ」についてもこだわりを教えてください。
とろけている瞬間って見ているだけで気持ち良くて、とっても美味しそうで、
なんだか幸せな気持ちになりますよね。そのとろける瞬間を切り取っているところがお気に入りポイントですね。
「とろ~り」部分をクローズアップするために、スライスチーズの本体のところは
マット加工でツヤを消し、とけている部分はツヤを出しました。
メッキの色も変え、よりとろけている感じが出るようにデフォルメしています。
Q「チーズ」をコンセプトにしたメガネ(サングラス)も面白いですね。
メガネってとてもシンプルで普通のデザインが多いですよね。
そんな普通のものに、ちょっと手を加えてアートにできないかなと思いデザインしました。
一見普通のメガネだけれど、よく見たら「チーズ」になっているというアート。
チーズの穴ぼこを表現するためにメガネをくり抜くことが、実際に可能なことなのか、
どうやったら表現できるのかを鯖江(※1)の職人さんにご相談しながら、制作していきました。
エメンタールチーズ、カマンベールなどカラーもチーズに近い色にしたところもポイントです。
eye Love シェーブルチーズ / エメンタールチーズ / カマンベールチーズ ¥38,000+税
Q 続いてチーズとも相性のいい「バーガー」についてお聞かせください。
アイデアが生まれたのはどのようなきっかけだったのですか?
バーガーの場合、日常の生活の中にある幸せな瞬間を切り取った作品です。
バーガーショップで自分の好きな具材を選んでトッピングできるという
シチュエーション自体がおもしろいなと感じていて
日常に溢れる「選べるシアワセ」やワクワク感を
アクセサリーで表現できたら楽しいなと思い発明したのが「バーガー」です。
確かリングが先に生まれたと思います。
バラバラの具材をアクセサリーで具現化するにはどうしたらいいかと考え、
指につけることによって初めて完成させるという発想が生まれました。
ナチュラルバーガー ネックレスセット(シルバー) ¥21,200+税
Q「バーガー」のこだわりのポイントをお聞かせください。
自分好みのバーガーが作れて、後から具材を付け足すこともできる。
この具材が「選べる」というネックレス自体が発明だと感じています。自分の中でも画期的でした。
各具材をバラバラにしたこともポイントです。そのことによって細かいディティールにこだわることができています。
具材毎にメッキの色を変えたり、エポ(エポキシ樹脂)を流して綺麗に色をつけたり。
Q 具材ごとにとってもリアルですよね。
レタスは葉の模様を表現するために2色のエポで色付けしてムラを出していたり、
チーズはメタル本体にしわをつけておいて、どろっとしているエポを流すことで
色の薄いところや深いところの濃淡を出したり。
国内にはエポを入れる一流の職人さんがいらっしゃって、
今でも手作業でひとつひとつ丁寧に作られているので、とても綺麗な仕上がりです。
エポの入り方によりひとつひとつ味わいがあり、ハンドメイドならではの温もりがあります。
もし具材が全てくっついた状態であれば、このような表情は生まれないので技術的にも理にかなっているデザインだと感じています。
ミートはエポを使用せず、銅古美のメッキをそのまま活かしてミート感を表現し、
バンズの上の粒はセサミをイメージしています。
バーガー屋さんで具材を選ぶ感覚でひとつひとつじっくり選んでいただきたいです。
Q 「バーガー」シリーズにはマリンテイストのアイテムもありますよね?
そうですね。バーガーのメニューにタルタルソースやフィッシュの具材を登場させよう
と思ったのがきっかけでマリンのコンセプトが浮かびました。
キャプテンバーガーというテーマで、七つの海を制覇したという伝説の男の話なんですけど。(笑)
長い航海の途中でキャプテンバーガーの船のフラッグが潮風でさびてしまった様子を銅古美で表現したり、
船のロープをQにしたりと、マリンの世界観と時間の経過を上手く表現できたところがお気に入りです。
Q 他にも「バーガー」には欠かせない「フレンチフライポテト」も印象的です。
ファーストフードの世界を表現する上で「ポテト」は欠かせないなと思いデザインしました。
ポテトの1本だけが飛び出すような仕掛けで、そのポテトには「Lucky」の文字が描かれています。
別名「Luckyポテト」です。
ポテトにもフニャフニャのポテトやカリカリのポテトなどいろんなポテトがあり
「フニャポテ派」「カリポテ派」って分かれますよね。こどもともよく取り合いになるんですけど(笑)
ポテトを引いてみないとわからないワクワクな感覚をおみくじと合わせて考えられたら面白いなと、
楽しかった記憶を辿ってデザインをしました。
Q ワカマツさんの経験がそのままデザインに活かされているのですね。
そうですね。デザインする上でアプローチの仕方は何通りかありますが
ストーリーやシチュエーション、コンセプトを考えてからデッサンをすることが多いです。
物語を考えて登場人物を増やしていくようなイメージです。
また、こどもの頃に経験したこと・楽しかったこと、
自分を形成しているしあわせな思い出や記憶を探るのもデザインのきっかけになります。
「経験している時点で既にデザインが生まれている」という表現の方が正しいかもしれません。
全てがデザインに繋がっていくので、無限の自由さがあります。
Q ワカマツさんが体験された幸せな瞬間が切り取られてアクセサリーになっているからこそ
身につけている人がまた笑顔になるのですね。
それでは、ワカマツさんが影響を受けたアーティストはいますか?
現代アートを代表する一人なのですがヨーゼフ・ボイス(※2)には大変影響を受けました。
ブランド立ち上げ当時は、彼の本をたくさん読み美術館に足を運んだりと、本当に彼の作品をよく見ていました。
彼の作品から日常に溢れるたわいもないものも見る角度や解釈でアートになりうるという可能性を知りました。
また僕自身「未来は自分の手で変えていけるんだ」というメッセージとして受け取り、
誰もがアーティストなんだということを教わりました。
先ほどお話した「チーズ」もまさにそうで、日常にあたりまえにあるものでも、
時代を変えるようなメッセージを発信できることをボイスから学びました。
Q 最後にワカマツさんの作品をどんな方に、またどんな風に身に着けてもらいたいですか?
アートって男女平等なものじゃないですか。
アクセサリーや服で考えてしまうと、女性、男性のデザインで分かれてしまうのですが
アートとして捉えると、そこはジェンダーレスというか、、、。
「人間」として感じるものだから、ポップアートとしてみれば
そこには女性らしさ、男性らしさは関係のないものじゃないかと思います。
「人」として楽しめるポップアートのような感覚で身に着けてもらえると、
また違った楽しみ方ができるのではないかと思います。
Q ありがとうございました!
記憶の片隅にあるノスタルジックな感覚。
ワカマツ タダアキの作品は誰もがこどもの頃に体験した「ワクワク」や「ドキドキ」が切りとられていた。
これからも普遍的なテーマで生み出されるワカマツ タダアキの「身につけるポップアート」をどうぞお楽しみに。
※1福井県・鯖江・・・日本のめがね枠生産の90%以上のシェアを誇るめがねの生産地。
※2 ヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys)・・・1921年にドイツ生まれ。
“社会彫刻”という概念のもと、20世紀後半以降のさまざまな芸術に多大な影響を与えた現代美術家。